阪急・阪神・北神急行・北大阪急行・能勢電鉄…これらはいずれも阪急阪神ホールディングスの子会社にあたります。また、神戸電鉄も持分法適用会社…いわゆるグループ会社になります。
ICOCA導入の際、同じグループにもかかわらず足並みが揃わなかった点が興味深い事例でした。
神戸電鉄と北神急行は一足早い2017年に導入した一方、「レイルウェイカード」という存在意義がわからないカードを発行してまでICOCA導入をしなかった阪急に追従し、2019年にようやく導入を開始した北大阪急行と能勢電鉄。
この両者の違いを調べてみると、どうも阪急電鉄の株式保有割合で変わってくるようでした。
会社の方針の決め方には「普通決議」「特別決議」「特殊決議」があります。「普通決議」には役員を選んだり首にしたり、計算書類・配当承認などがあります。「特別決議」は合併・事業譲渡・定款の変更などがあります。
決議には株主総会での過半数の票を必要としますから、50%以上を持つと自動的にその企業を支配することができることになります。
おそらくICカードの導入可否については「普通決議」で決めるものと見込まれますが、これって「阪急電鉄が株式を半分以上持っていて、拒否されると導入できなかったからなのでは…?」という仮説が浮かびました。
ということで、その仮説があっているのかどうかを検証する為にも、各社の株式保有率を見てみました。
30%以下
一足先に導入となった神戸電鉄・北神急行電鉄については、阪急阪神ホールディングス、もしくは阪急電鉄が持つ株式比率が30%以下となります。
神戸電鉄:28.2%
2017年、一足先に導入した神戸電鉄。阪急系が保有する株式の割合は3割程度になります。
(阪急系)
阪急阪神ホールディングス:27.29%
阪急電鉄:0.97%
合計:28.26%
(その他主要株主)
三井住友銀行:3.91%
日本トラスティ・サービス信託銀行(4口) 計:4.95%
みなと銀行:1.03%
日本マスタートラスト信託銀行:0.93%
合計:10.82%
北神急行電鉄:27.5%
借金を阪急に面倒見てもらうなど、かなり阪急色の強い北神急行電鉄ですが、株式比率を見ると3割以下とそこまで高くありません。
先に挙げたように、神戸電鉄も阪急阪神ホールディングスの支配下に置かれてはいます。しかし、5割以上を保有するわけではなく、いわゆる「顔色を伺う必要がない」ことから、別事業者としてここでは区分けしています。
(阪急系)
阪急電鉄:27.5%
(その他)
神戸電鉄:19.9%
神鉄エンタープライズ:7.625%
三井住友銀行:5.0%
三菱UFJ銀行:4.0%
東京海上日動火災保険:4.0%
日本生命保険相互:4.0%
関西電力:4.0%
川崎重工業:3.0%
三菱電機:3.0%
日本信号:3.0%
みずほ銀行:2.5%
新生銀行:2.5%
あおぞら銀行:2.5%
三菱UFJ信託銀行:2.5%
三井住友信託銀行:2.5%
あいおいニッセイ同和損害保険:2.5%
50%以上
一方で、以下は50%以上の株主を保有する場合。この場合は、株主総会の決議を1社で成立させることが出来る為、阪急電鉄の指示に従わざるを得ません。
北大阪急行:54%
阪急電鉄:54%
大阪府:25%
出典:北大阪急行「2017年度(2017年4月1日~2018年3月31日まで)貸借対照表、損益計算書および個別注記表」より
北大阪急行は阪急電鉄が54%の株式を握っており、親会社である阪急の顔色を伺う必要があります。
能勢電鉄
阪急電鉄:98.5%
出典:能勢電鉄「第165期(平成29年4月1日から平成30年3月31日まで)貸借対照表及び損益計算書 」より
能勢電鉄に至っては殆ど阪急電鉄が保有しており、残る数パーセントは会社建設時に協力したメンバー…の末裔…と言われています。
尚阪神電鉄については、名目上は「阪急阪神ホールディングス」の100%子会社ですが、合併時の経緯や2005年から社長の座に座る角和夫氏が阪急系の役員であることから、主導権は阪急側にあるものと思われます。
以上の事例を見ていると、やはり株式保有率で左右されることに間違いなさそうですね。
株式の過半数を握られるということは、今回のように他私鉄が次々と参入しているのに親会社の方針で黙ってそれを見ていなければいけないなど、デメリットもあるようです。